2011年3月 その他の読んだ本

レビュー(?)を書けなかった、今月読んだ本。


『私たちが星座を盗んだ理由』 北山猛邦

私たちが星座を盗んだ理由 (講談社ノベルス)

私たちが星座を盗んだ理由 (講談社ノベルス)

5つのミステリを収めた短編集。どれも思わずゾッとするラストを迎え、くらくらするような読後感を味わいました。世にも奇妙な物語、みたいな。面白かったです。
以下は裏表紙の引用。


恋のおまじないに囚われた女子高生の物語『恋煩い』
絶海の孤島にある子供たちの楽園の物語『妖精の学校』
孤独な詐欺師と女性をつなぐケータイの物語『嘘つき紳士』
怪物に石にされた幼なじみを愛し続ける少年の物語『終の童話』
七夕の夜空から星座を一つ消した男の子女の子の物語『私たちが星座を盗んだ理由』


この中で最も残酷に思えたのは『恋煩い』。なにが怖いって、リアリティがあるところです。度合は違えど、女性なら誰もが抱くであろう、嫉妬心や弱い心……これらが引き起こす一連の事件は、もしかしたら自分のすぐそばで起きているかもしれない。そんな現実味が恐ろしい。
メインになった3人の幼なじみの関係性がすごく上手く描かれていると思いました。特に、アキのシュンに対する複雑な感情は読み応えがあります。単に女の子の恐ろしさを感じるだけでなく、中心に立つ男の子の存在を強く印象付けられたので、ただ怖いだけだったり、後味の悪さを感じたりするのではなく、残酷さに浸ってしまったのでしょう!


ラストのインパクトが最も強かったのは『妖精の学校』。真相を知ってから読み返すとまた感じるものが変わってきます。社会問題を描いていたわけですが、子供の目線で語られる物語はまるでファンタジックな絵本。その雰囲気を通じることで、むしろ恐ろしさが増しています。今の自分では知識が足りない部分があるので、もっと勉強してからまた読みたい。真実を知れば知るほどショックが増していきそうですが、同時に、細部まで作りこまれた設定に感動しそうです。


『嘘つき紳士』は悲しい話でした。話の展開はだいたい予想できましたが、最後の一行に虚しさが募って、予想以上にもやもやした気持ちに。クリスマスで賑わう町がより虚しさを引き立たせます。


これまでの短編は「このあとどうなってしまうんだろう」と考えてしまう終わり方のですが、『終の童話』はこれ以上の未来を想像することもできないほど、苦しくて切なくて美しい結末。ウィミィの出した結論がどちらであれ、彼がこの先、まともに生きていけるとは思えません。他の短編では、更に暗いところへ落ちていってしまうにしても“未来”が想像できてしまうのに対して、この物語だけは終わりしか見えない!もっと言ってしまえば、ラストシーンで時間が止まってしまったような感覚。『終の童話』というタイトルがまた、いいですね。


表題作『私たちが星座を盗んだ理由』は、星座を盗むというどことなくロマンチックでファンタジックな題材の中、すでに大人になった一人の女の子の感情を描いた物語でした。3人の少年少女が登場する点では『恋煩い』に似ていますが、こちらの方が彼らのすれ違い方が切ない。たぶん、誰も悪くないというところが怖さではなく切なさになったんでしょう。
夏を終えようと踏み出す決心をした姫子。5つの短編の中で、彼女が一番、少しでも明るい未来に進んでほしいと思えた主人公でした。わたしの好き嫌い云々ではなく、物語の展開として。


中には結末を想像できるものもあったけれど、それでもラストまで読み切って満足できたのは、描き方がわたし好みだったからでしょうか。


片山若子さんのカバーイラストもとってもすてきな一冊です♪

読んだ日:2011/3/13


『大江戸あやかし犯科帳 雷獣びりびり』 高橋由太

大江戸あやかし犯科帳 雷獣びりびり (徳間文庫)

大江戸あやかし犯科帳 雷獣びりびり (徳間文庫)

んんん、やっぱりあまりお上手な文章とはいえないんですけれど、読みながら作家さんからキャラクターへの愛情を感じました。
クロスケやカタナ、河童に天狗……妖怪達は個性的で可愛らしい。
ただ、主人公と八歳の童女を許婚設定にしなくてもよかった気はします。あってもなくてもどちらでもいいように思るというか。許婚であることによって魅力に感じるものがあればいいんですが……。『オサキ〜』シリーズもそうですが、主人公には恋の相手を作りたい作家さんなのかな。
ほとんどのキャラクターを、『オサキ』だったら誰々!と当てはめてしまえるので、もうちょっと別の人間関係も見てみたいかも。

読んだ日:2011/3/16


チョコレート・アンダーグラウンド』 アレックスシアラー/金原瑞人

チョコレート・アンダーグラウンド

チョコレート・アンダーグラウンド

海外の児童文学を読むのはすごく久しぶり。
分厚いな、と思ったけれど、文字は大きいしすらすら読み進められました。
ハントリーやスマッジャーを襲う困難が意外とあっさり解決してしまったので、緊張感は思ったより少なかったのですが、闘う少年達の姿は感動的で、ラストの爽快感はたまらない。
彼らの後日談の書き方も好きでした♪
自由を求めて奮闘する少年達の物語、何より魅力だったのは、“チョコレート”という題材ではないでしょうか。

読んだ日:2011/3/17


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